青の瞬間/2001年

  • 監督:草野陽花
  • 出演者:郭智博、柳沢真理亜、伊藤淳史、世良公則、岸部一徳、ほか
  • 上映時間:85 形式:カラー/35mmスタンダードサイズ
  • 製作:㈱日本スカイウェイ ㈱イエス・ビジョンズ
    ㈱パル企画
  • 配給:㈱パル企画

イントロダクション

15歳という多感でほろ苦い青春時代を車椅子の少女との恋愛や親友とのけんかを通して大人になる少年の姿を描いた珠玉の作。
弱冠25歳の新人監督・草野陽花が日本映画学校在籍中、実習作品として監督した短編『掌の上』は第21回神奈川県映像コンクール最優秀賞受賞。
審査委員長の大島渚監督をはじめ、数多くの著名人達から高い評価を得、今回の劇場用長編映画化となった。
若き日の大島監督作品を髣髴とさせる若いエネルギーに溢れた本作品は、監督自身、情けない15歳だったと語る少年時代の体験をもとに描いている。
その主人公達夫役に、郭智博。
そして、車椅子の美少女・加奈恵役は柳沢真理亜。1000人のオーディションの中から選ばれたシンデレラガール。
新人ながらも、監督から演技力を高く評価され最終的に彼女がヒロインの座を射止めた。
達夫の親友の賢一役には、「電車男」の伊藤淳史。
この『青の瞬間』には流行のものは一切描かれていない。そこに映る美しい島の風景と達夫・加奈恵・賢一の3人の成長だけがとても新鮮に描かれている。

舞台は島根県、西ノ島。
東京の高校受験を控えた北山達夫(中3)は悪友の土橋賢一(中3)と 二人で島のはずれの小屋をアジトにし、放課後はそこで時間をつぶす単調な毎日を送っていた。

中学卒業を控えた冬の日、あいかわらず学校へはほとんど来ない賢一が、突然顔を出し、達夫を 港に連れ出した。
島を出てピンサロのスカウトをしている先輩の永田重秋(18)、が島に戻って来た。
島で酒を手に入れ、酔っ払った重秋は、ボクシングをしろといい始めた。
重秋が出す1等賞金を賭けて達夫ら2人と、重秋の子分・正(16)の3人で、競うことになった。
しかし、ふとしたタイミングで優勝してしまった達夫は賞金をもらうことなくその場から立ち去っ てしまった。
自分も島から出たい達夫は重秋の姿をみて将来の自分への不安感が募った。

冬休みになり、達夫は通学路にあるスナックの2F窓からいつも海を眺めている美少女の店でアル バイトをすることになった。
はじめて近くでみた少女、多田加奈恵(15)は車椅子に乗っていた。
仕事にもなれた頃、閉店後の深夜、加奈恵が「外へ行こう」と誘ってきた。両親の目を盗んで二人 は深夜の散歩に出かけた。
戻って来た時には、母親からきつく叱られたのにもかかわらず、次の日 もそして次の日も、日課のようにバイトが終わると散歩に行く二人。
女の子と二人きりで出かけるなんてことのなかった達夫はうれしくてたまらなかった。
小さい頃、岩場から落ちて歩けなくなった加奈恵も、毎日外に出られることに解放感をおぼえた。

ある日、加奈恵は達夫に、キスしてと言ってきた。
単に自分の狭い世界を共有してくれる人が欲しくて、達夫を誘っただけだった。
そんな加奈恵の冷めた気持ちに気付かない達夫はうちに帰って余韻を楽しんでいると、賢一が訪ねてきた。
重秋が達夫とボクシング勝負をしようと言う。
気分が高揚している達夫は勝負を受けた。 しかし、重秋たちが待つ小屋で、重秋が賢一たちにした自慢話に我が耳を疑った。
重秋がスナックの前にいた 加奈恵を連れ出し、達夫たちのアジトで加奈恵とやったという・・・。
重秋に対して異常なほどの敵対心を抱きつつ達夫は重秋殴りかかるが、逆に重秋にボコボコにされてし まった・・・。

次のアルバイトの日もいつものように散歩に出かけ、あの小屋に加奈恵を連れて行った。
暗闇の中、達夫はキス以上のことを要求する加奈恵の気持ちがさっぱり理解できず、重秋のことを聞いた。
すると、加奈恵は、笑って認めた。彼女のうらぎりともとれる行動に達夫は怒り、失望感にかられた。
しかし、自分の心の奥にある悲しみがあふれてきた加奈恵は達夫に気づかれないように泣いていた。

次の日、達夫のバイト先に、重秋がものすごい形相で乗り込んで来た。
数時間前、達夫は重秋が働いている繁華街へ行き、ボコボコに殴り倒してきたところだった。
相手にしようとしない達夫を無理やり店の外に連れ出し、鉄パイプで殴り倒す。
客の一人が止めに入ると、重秋は、賢一達と共に、その場から去っていった。
達夫にとって賢一からも裏切られたというショックから、島のすべてに絶交宣言をした・・・。