- 監督:木村威夫
- 原作:木村威夫『87×26の瘤広場』(ストイケイオン18号より)
- 脚本:山田英樹/我妻正義/木村威夫
- 音楽:川端潤
- 出演者:長門裕之、有馬稲子、井上芳雄、永瀬正敏、上原多香子、宮沢りえ、葛山信吾、南原健朗、高橋和也、エリカ、浅野忠信、小倉一郎、鈴木清順、桃井かおり
- 上映時間:106分
- 製作:パル企画/トルネード・フィルム/ポニーキャニオン
- 配給:パル企画
- 劇場公開:2008年10月18日 岩波ホール
- DVDリリース:2009年6月17日 外部サイトへ【Amazon】
- 予告編:外部サイトへ【You Tube】
- 英語タイトル:Dreaming Awake
イントロダクション
90歳の新人監督・木村武夫が織り成す、過去・現在・未来をつなぐ人間絵巻-
戦後の日本映画界を担った『けんかえれじい』の鈴木清順監督、『忍ぶ川』の熊井啓監督、『父と暮せば』の黒木和雄監督などの名監督の数々の作品で美術を担当した巨匠・木村威夫。本作『夢のまにまに』は、90歳になった木村の長編劇映画監督デビュー作である。
映画学校の学院長・木室創と、学生・村上大輔の世代を超えた交流。そこで浮き彫りにされる木室と妻、老夫婦の過去。木村威夫の決定的体験となった戦争を見据えながら、老いと若さ、男と女。生と死を、象徴的にめくるめく映像美で表現。また木室と、病を抱えて苦悩する青年・村上との出会いに、かつて戦争で散っていった若者たちの命を重ね、失われた青春の慟哭が痛切な思いで描かれている。
主人公 木室創役を、大御所 長門裕之。その妻・木室エミ子役を、有馬稲子が迫真の演技をみせる。そして、木室創と、魂のやり取りをかわす学生・村上大輔役に、ミュージカル界のプリンスこと井上芳雄。今にも消えてしまそうな儚さを漂わせながら、渾身の演技で演じきりった。
若き日の木室創を見守る・よしず張りのある飲み屋のママ役、現代の木室創を描く銅版画家・中埜潤子役と、時代を越えた2役に宮沢りえ、若き日の木室役に永瀬正敏、若き日のエミ子役に上原多香子、闇屋役に浅野忠信、村上大輔の母親役に桃井かおり。そして、本作品が遺作となった能楽師・観世榮夫が、作品に重みを与える。
【ストーリー】
木室創(長門裕之)は、映画を専門とする学校・NK学院の学院長に就任した。その中で、一人の学生・村上大輔(井上芳雄)が何かと気に掛かった。彼は、左腕に心の恋人である‘モンロー’の刺青を入れていた。おどけているように見えるが-しかし影のある、独特のオーラを放つ青年だった。
「なぜ戦争なんかしたんだ! 芸術を志した者が、人を殺す為の世界へ追いやられて、そして死んだ― 絵を描きたいのに、みんな死んでしまった」
大輔は、60年前の戦時中に自分達のような若者がたくさん死んでいったことの不条理さに苛立ちを感じ、戦時中を生きた木室にその思いをぶつけるのだった。一方木室は、その過去を背負ったまま、老いて死を迎えようとしていた。しかし、痛々しいほどに激しい若者の慟哭に、木室は自分の青春を重ね、共鳴してしまう。思い出す青春の日々・・・・・。
そんな木室の前に、木室を描く女性が現れる。その女性は、木室が青春時代に淡い恋心を抱いていた女性に、とても似ていた。
木室の妻・エミ子も(有馬稲子)また、60年前に大切な人を亡くし、生き残ってしまったという思いからいまだに抜け出せずにいた。広島の原爆で姉を亡くした過去を持つエミ子は、姉の形見・アルミのお弁当箱を大切に持っていた。いつも思い出せないピアノ曲の最後のフレーズのように大切な人の面影は遠く儚く、彼らを忘れないように思い出すことだけがエミ子の救いなのだった。
そんな中、大輔は精神病を患い学院を中退する。その後、木室と交わした手紙の中で、若者である大輔が自殺をほのめかす。若さと老い、過去と未来、生と死、そして愛―様々な事が浮き彫りになっていく。
木室は、大輔の‘生きたい!’という魂の叫びを感じ、何とか思いとどまらせようと手を尽くすが・・・・・・。そして、そうこうしている折、木室夫婦にもある変化が訪れていた―。