【イントロダクション】
いつかきた道を、忘れないために。

『竜馬暗殺』『父と暮せば』『TOMORROW/明日』で知られる映画監督・黒木和雄。2006年に急逝して今年で10年が経ちます。
晩年は、第77回キネマ旬報ベストワンの『美しい夏キリシマ』、井上ひさし氏原作の『父と暮せば』など、戦中戦後の市井の人々にフォーカスをあてた戦争レクイエムと呼ばれる4作品を撮り続けました。
生前、「現在の日常のなかに「戦時下」のあの日々の姿がかたちを変えて、ふたたび透けて見えてくるような危機感を、私はいだきます。」と語った黒木監督。
遺作となった『紙屋悦子の青春』の完成直後、初日の舞台に立つことなくこの世を去りましたが、それから戦後70年を迎え、わたしたち自身や社会は何が変わって、何が変わっていないのでしょうか?

本作品では、黒木監督の肉声や作品、同世代の著名人から10代の学生のインタビューを通して、監督が抱いた危機感はどの様なものだったのか、そして、戦争をしらない戦後世代はどの様にいまの時代を捉えているのか、紐解いていきます。
本作品を監督するのは、黒木監督の『祭りの準備』などの助監督を経て、『正午なり』(1978年)で映画監督デビューした後藤幸一監督。長年にわたり黒木監督と交流のあった後藤監督が、黒木作品に込められた非戦と自由への想いを未来へ繋げる必見のドキュメンタリーです。